レドックス活性材料は、刺激により導電性や色調変化など、物性を可逆にスイッチングできる材料として注目を集めている。ここに液晶の秩序構造を導入することによって、レドックス刺激により新たな光・電子機能性を協調的に発現するソフトマテリアルの開発を行うことを目的として行ってきた。そのためには、レドックス活性部位を担う分子に、同時に電解質構造もたせることが重要であると考え研究を行ってきた。前年度までに合成した電子活性なイオン性液晶が発光特性を示したため、本年度においては、前年度に設計・合成したイオン性液晶について、その発光特性について詳細に検討した。具体的には、カラムナー液晶性を発現したピリジニウム塩、ピリミジニウム塩、キノリニウム塩について液晶状態の発光特性を調べた。するとまず、これら一連の化合物からの発光は可視域をカバーしており、イオン液晶において初めてフルカラーの発光が達成できたことがわかった。この発光に関して詳細な検討を行ったところ、キノリニウム塩において自己組織的に集合することで溶液中よりも強い発光を示すことがわかった。これらの化合物は立体的に混み合ったクロモファーを有するために、凝集しても発光は抑制されず、さらに、分子内回転や振動が抑制されたために、凝集状態でより強い発光を示したと考えられる。この挙動は、バルク状態の集合体のみならず、溶液中の集合体においても観測された。これらの結果から、自己組織性イオン性化合物が新たな有機発光材料として応用へとつながる可能性が示唆された。
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