有機エレクトロニクス素子の低コスト化・大面積化を目指して、溶液プロセス可能な有機半導体の開発が近年盛んにおこなわれている。塗布可能な正孔輸送型有機半導体はP3HTをはじめ数多く報告されているのに対して、電子輸送型半導体は希少である。本研究では、ペルフルオロアルキル基をパイ共役高分子に導入することによって、電子受容性およびフルオラス溶媒への溶解性が向上するものと考え、ペルフルオロアルキル基を側鎖に有するポリ(チエノピラジン)を設計・合成し、その物性を評価した。得たホモポリマーは、フルオラス溶媒にのみ選択的に溶解し、アセトンやクロロホルムなどのフッ素を含まない有機溶媒には不溶であることがわかった。ポリマー薄膜の紫外・可視・近赤外吸収スペクトルの吸収端から算出したエネルギーバンド幅は0.75eVと極めて狭く、対応するジアルキル置換ポリ(チエノピリジン)のバンド幅0.93eVよりも小さいことは注目に値する。また、ポリマーの電気化学的特性を調べるために、ITO電極上に塗布したポリマー薄膜のサイクリックボルタンメトリーを測定したところ、電位を負に掃引すると、-0.34V付近に可逆な酸化還元波が観測された。還元電位から求めたホモポリマーの電r親和力は約4eVであり、高性能電子輸送型半導体として知られているPCBMやBBLと同等の値を示すことを明らにした
|