研究概要 |
本年度は,原生代最末期のゴンドワナ超大陸の衝突帯であるインド南部で採集した超高温変成岩類や花崗岩類から抽出したジルコンのウランー鉛年代の基礎データを得て,年代測定の結果や岩石記載情報に基づいて南インド地殻の形成過程を考察する事を最大の目的とした.以下に研究概要を要約する.(1)レーザー・アブレーションICP質量分析装置を用いて,これまでに10種類以上の岩石試料から抽出した合計300粒以上のジルコンのスポット分析を行なった.その結果,南インド地殻の北端の岩石が始生代最末期での火成活動と変成作用を被った証拠や,南インド地殻の形成プロセスにおいて原生代最末期の大陸衝突の前の数億年間で沈み込み帯が形成されていた可能性を示す証拠を得た.なお,8月に南インドでの地質調査を実施しており,この調査で採集した岩石試料も上述の地質年代測定の対象である.また,大陸地殻の主要な構成物質である花崗岩類の高温高圧下での溶融関係を調べるための予備実験を開始した.(2)成果の公表:以前より進めていた,マグネシウムに富む十字石組成の高温高圧実験の成果がAmerican Mineralogistに受理され,公表された.上述の地質年代測定の結果を論文としてまとめ,平成21年度内に3編の筆頭著者論文を国際レフェリー誌へ投稿した.その内,1編の論文が平成22年4月にJournal of Geodynamicsに受理され,2編の論文が現在改訂中である.海外においては,INSA-JSPS二国間交流事業のワークショップ(ハイデラバード)及び第6回ゴンドワナーアジア国際シンポジウム(ハノイ)で研究成果を報告した.国内では日本地球惑星科学連合2009年大会,日本地質学会第116年学術大会,第29回極域地学シンポジウム,東南極セミナー(京都,山形),相関地球化学ICP-MSセミナー(京都)で研究発表を行なった.
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