研究概要 |
(1)本年度は,5月から約10ヶ月間,オーストラリア国立大学(キャンベラ)に滞在した.目的は,大陸縁辺部での物質循環の過程を調べるための,放射性鉱物間及び放射性鉱物-メルト間の微量元素・希土類元素の分配関係の研究である.現在,天然の高温変成岩類と花崗岩質岩の記載(微量元素・希土類元素の濃度測定),及び実験岩石学的手法(高温実験・高温高圧実験)の多角的視点から研究を進めている.高温変成岩の記載は既に作業を終え,論文を執筆中である.11月にオーストラリア南東部のラクラン摺曲帯(古生代の花崗岩質岩の広域分布地域)の縁辺部で地質調査を行ない,研究に使用する花崗岩質岩を採集した.電気炉を用いた1気圧の実験では,低酸素分圧条件及び高酸素分圧条件で,合計10回以上の実験を行なった.現在,研究最終年度での成果報告を目指して,花崗岩質岩及び実験生成物の化学組成を測定中である.研究最終年度の計画として,1気圧実験の結果をもとに,ピストンシリンダー装置を用いた高温高圧実験を本格的に実施する.(2)成果の公表:昨年度から続けていた,インド南部で採集した高温変成岩類や花崗岩類から抽出したジルコンのウラン-鉛年代測定の成果が4編の国際レフェリー誌(Journal of Geodynamics, Journal of Asian Earth Sciences, Journal of Mineralogical and Petrological Sciences及びGeological Journal)に受理された.その内の3編は既に出版されている,1編は印刷中である.南インドの一連の研究は,研究代表者らによってインド南部の南北400km以上の距離に渡って行なわれた広域地質調査,及び室内研究(岩石記載・地質年代測定)の成果であり,原生代に起こったゴンドワナ超大陸を形成する大陸衝突イベントの直前の数億年間にモザンビーク海の海洋底の拡大・閉鎖の運動があったという地質構造発達史を含む大陸形成・成長モデルを主張する.
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