研究概要 |
本研究では高密度に多重化された光キャリヤの一本一本を256以上の多値QAM変調することで10bit/s/Hz以上の高い周波数利用効率を有する大容量コヒーレント伝送の実現を目指している。そのためには位相及び振幅が共に高安定な光源を開発し、QAM信号の多値度の向上を図ることが大変重要である。そこで、初年度(平成21年度)は低位相雑音かつ低振幅雑音特性を有する周波数安定化光源の開発を第一の目標とした。また、これまで開発してきた従来の周波数安定化ファイバレーザを用いて256QAMコヒーレント伝送実験を行い、現状の伝送システムの性能を評価することを第二の目標とした。 初年度は研究計画に基づき、(1)低位相雑音かつ低振幅雑音特性を有する周波数安定化光源の開発、(2)従来光源を用いた256QAMコヒーレント伝送実験に取り組んだ。さらに今後の大容量伝送の実現を念頭に、(3)光時分割多重方式(OTDM : Optical Time Division Multiplexing)を従来のCWコヒーレント伝送へ適用し、1チャンネル当たりの伝送速度(伝送容量)の拡大を図った。(1)においては、線幅数kHz、Relative Intensity noise(RIN)が-115dB/Hz以下の低位相雑音、低振幅雑音特性を有する周波数安定化ファイバレーザ及びリング共振器型半導体レーザの開発に成功した。(2)においては、従来の光源を用いたコヒーレント伝送システムにより、偏波多重4Gsymbol/s,256QAM信号(64Gbit/s)を160km伝送することに世界で初めて成功した。本成果は光ファイバ通信国際会議(Optical Fiber Communication Conference : OFC2010)において口頭発表し、国際的に高い評価を受けた。本実験結果は光通信においてもマイクロ波通信と同等以上の高い周波数利用効率の実現が可能であることを示している。(3)では電子デバイスの動作速度に制限されていたシンボル速度をOTDM技術を用いることで大幅に増大し、単一チャネル当り400Gbit/sのretum-to-zero/32QAM(RZ/32QAM)信号のコヒーレント伝送に成功している。本成果も同様にOFC2010国際会議において口頭発表し、国際的に高い評価を得た。
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