今年度の研究内容を以下に示す。 1.分子動力学シミュレーションによるナノスケール細管への流体の毛細管現象の再現 ナノ細管へのLennard-Jones流体の毛細管現象に対して分子動力学シミュレーションを行い、その吸収挙動はLucas-Washburnの式で表現できた。しかしながら、Lucas-Washburnの式からはずれる結果も何例か見られた。この理由として、Lucas-Washburnの式は動的接触角(DCA)を考慮していないことが挙げられる。Coxの式ではこの動的接触角(DCA)を考慮に入れているため、Lucas-Washburnの式とCoxの式をカップリングさせることで、Lucas-Washburnの式からはずれた計算結果の妥当性を確認できた。 2.ファジー理論的アプローチでのCNT内における水の拡散のモデリング 本研究では、CNT内の流水のモデリングの問題を解決する方法として適応型回路網をベースとしたファジー推論システム(ANFIS)を提案した。この手法は、ファジーif-thenルールによる人の知識と規定の入出力データの両方をベースとした入出力の写像から構築されている。 3.nanochannels内における流体のモデリングに対して有用なツール 分子動力学シミュレーションから得られたデータを使い、吸収範囲をパラメータ(時間、表面張力、流体の粘度や壁と流体の相互作用など)の関数にモデリングするためのものとしてANNがある。ANNでは高精度に侵入範囲をモデリングすることが可能である。さらに、ANNで重要なパラメータである時間、表面張力、流体の粘度や壁と流体の相互作用はすべてconnection weightアプローチによって求められる。これより、nanochannels内での流体の移動現象に対して、壁と流体の相互作用が重要な役割を果たしていることが判った。
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