研究概要 |
研究初年度の本年度は、まず糞便サンプルを用いたツル種の判別解析と個体識別解析の方法を検討した。また、2007年度と2008年度にツル越冬地において採取したツルの糞便サンプルを検査して、野生ツル集団におけるコクシジウムの感染状況を調査した。本研究では、十分な数のサンプルを検査するために、地面に落ちている糞便を大量に採取することでコクシジウム調査を行うこととした。しかし、非侵襲的に採取された糞便はその由来が不明であることから、集団における感染状況を正確に把握できない可能性がある。そこで、糞便から抽出した糞便DNAを用いて、ツルのミトコンドリア16SリボソームRNA遺伝子配列を決定することにより、排泄個体のツル種を判別する方法を開発した。また、糞便DNAを用いてマイクロサテライトマーカーと性判別マーカーを用いた遺伝解析を行うことでツルの個体識別を行うことに成功した。次に、2007年度と2008年度の冬季にツル越冬地で採取した約1,000個の糞便についてコクシジウム調査を行った。まず、採取した糞便についてツル種判別解析と個体識別解析を行うことで、別々の個体から排泄されたと推定される615個の糞便を選別した。次に、それらの糞便について検鏡とPCR-CE(PCR-based capillary electrophoresis)解析を行うことでコクシジウムの感染状況を調査した。その結果、コクシジウム陽性率はタンチョウ(5.9-30%)よりも、ナベヅルとマナヅルできわめて高い(92-97%)ことが明らかとなった。また、PCR-CE解析結果の対応分析により、コクシジウムの群集組成がナベヅルとマナヅルで異なることが示唆された。
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