石油資源の枯渇や安定的な供給が不安視されている今、石油資源を原料とする合成高分子に代わり、再生産可能な生物資源(バイオマス)を原料とする天然高分子の利用が求められている。特に植物の主成分であるセルロースは、地上に最も大量に蓄積されている構造多糖であり、幅数ナノメートルの剛直な繊維状の結晶構造とることから、このセルロースの結晶をナノファイバーとして材料化する研究が近年盛んに行われている。 TEMPO触媒酸化で得られるセルロースナノファイバーは(1)高い透明性、(2)柔軟で高強度、(3)親水性だが水滴は浸透しにくいこと、(4)低熱膨張率、(4)200度程度の熱分解温度、(5)合成高分子以上の酸素バリア性を有することが判っている。本研究の目的は、このセルロースナノファイバーを既存材料と複合化することでセルロースだけでは発現しえない高機能性を持たせ、セルロースナノファイバー材料としての可能性を更に展開させることである。本年度はセルロースナノファイバーを水溶性高分子と複合化した材料について、その機能性や構造を分析した。関連する研究として、セルロースナノファイバーの表面カルボキシル基を酸型にしたフィルムは、ナノファイバー同士の水素結合により弾性率が高くのび難い透明フィルムができることを明らかにした。この成果は、表面官能基を改質することで、セルロースナノファイバーの材料としての機能が変えられることを示している。本年度は、前年度からの一連の研究を雑誌論文や学会などで発表した。
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