平成22年度は、博士論文の一部を学術論文として発表した。このうち、16世紀後半のオスマン朝をとりまく気候変動の実態と、自然災害の増加を検討した第二章の一部は、「気候変動とオスマン朝-小氷期」における気候の寒冷化を中心に」と題した論文として、勉誠出版の『アジア遊学』の特集号である『環境と歴史学』に採録の上、出版された。また、16世紀後半において世界有数の大都市であったイスタンブルをとりまく厳しい食糧事情をあきらかにした第三章の一部は、「16世紀後半のイスタンブルにおける食糧事情」として、東京大学生産技術研究所の村松伸准教授が代表をつとめる全球都市全史研究会において7月27日に口頭発表を行った。この報告の内容をより詳細にしたものは、同名の論文として『総合地球環境学研究所・メガ都市プロジェクト全球都市全史研究会報告書』第4巻に掲載され、本年3月に刊行された。さらに、16世紀後半のオスマン朝における飢饉の頻発と、それにともなう食糧不足の増加を考察した博士論文第三章の他の一部は、「16世紀後半のオスマン朝における飢饉と食糧不足」として、東京大学東洋文化研究所が発行する『東洋文化』に採録されることとなった。これら以外の論文としては、修士論文の一部を加筆修正した、「15、16世紀オスマン朝の市場メカニズム-法令集におけるイフティサーブの分析を中心に-」が『市場と流通の社会史I伝統ヨーロッパとその周辺の市場の歴史』に収録され、出版された。 海外における調査活動としては、5月3日から31日までトルコ共和国とイタリアにおいて史料調査を行った。トルコ共和国においては、主にイスタンブルにある総理府オスマン文書館において、今後の研究に必要な17世紀のオスマン語史料の収集を行った。また、5月4日にユルドゥズ工科大学地球研究センターにおいて博士論文の概要についての研究報告をトルコ語で行った。
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