最終年度である平成23年度は、これまでの研究成果の公表と、今後の新たな研究のための史料調査が活動の中心となった。 共著としては、2012年3月に山川出版社から出版予定の『オスマン帝国史の諸相』に、博士論文の一部である「穀物問題に見る16世紀後半のオスマン朝と地中海世界」が採録された。同論文は、16世紀後半の地中海世界における物資流通と国際関係のかかわりを、穀物問題に焦点をしぼることによって解明することを目指したものである。 国内における研究発表としては、拡大地中海史研究会において、「16世紀後半の東地中海世界における「穀物争奪戦」-エマール=ブローデル・テーゼの再検討-」と題する報告を行った。博士論文の一部でもある同報告は、モーリス・エマールとフェルナン・ブローデルによって主張されてきたテーゼを再検討したものである。また、羽田正東京大学教授を代表とする基盤研究(S)「ユーラシアの近代と新しい世界史叙述」において、「16世紀後半のオスマン朝における飲酒行為をめぐる諸問題-多元的社会における「価値」を考える-」と「イスタンブルへの穀物供給に見る「伝統」と「近代」」と題した報告を行った。 さらに、山川出版社から刊行されている『歴史と地理世界史の研究』には、イスタンブルの歴史を様々な著作を挙げつつ紹介する「イスタンブル歴史案内」が掲載された。 今後の研究に向けての史料調査では、2011年8月14日から9月2日までトルコ(イスタンブル)とアイルランド(ダブリン)を、2012年1月15日から2月3日まではトルコ(イスタンブル)とイギリス(ロンドン)をそれぞれ訪れ、現地の文書館や図書館において関連史料の調査収集を行った。 以上が、平成23年度の研究実績の概要である.
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