研究概要 |
本研究は,学習者の英語音声の韻律的側面,とくにリズムの制御能力を,英語教師による主観評価に代わって客観評価する計算機モデルを構築することを目指す.韻律的な情報を伝える3つの要素である,音声の長さ,大きさ,高さの変化について,学習者の制御特性と英語教師の評価特性の両面から多角的に分析する.それらの結果を組み合わせて,英語教師による主観評価を高い精度で模擬する客観評価モデルを構築し,試用実験によってその有効性を確かめる.本年度は,英語音声を特徴づける強勢に焦点を当て,以下の成果を得た.まず,日本語音声には存在しない強勢と弱勢の対比に着目して,主観評価をより精度よく模擬するための,学習者の特徴を適切に示す指標について検討した.指標の有効性は,その主観評価の結果との相関係数で判断した.実験の結果,強音節を中心としてその前後に弱音節がつながったものをリズム区分と定義して,そこで求めた強/弱音節の持続時間の比率に基づく数値が効果的であることがわかった.次に,学習者のリズムの制御能力の表れ方や英語教師の評価の正確さがテキストの特性に依存することに着目して,客観評価モデルを効率的に構築するための,英語音声のリズムの評価のためのテキストの要件を検討した.要件の単位には,英語のリズムの中でよく知覚される強音節の特性に着目して,1テキストに含まれる強音節の個数を用いた.予測実験の結果,1テキストに3個の強音節が含まれることが有効な要件であることがわかった.報告者の本年度に得られたこれらの成果では,評価の尺度や対象を考慮することで,より精度の高い主観評価の模擬が可能であることが示された.
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