私がこれまでに開発してきた「銀河形成の準解析的理論モデル」を用いて、主体的に以下の研究を行ってきた:(1)宇宙の星形成史における、ダスト減光補正および光度と星形成率間の変換定数の不定性評価、(2)Ia型超新星の遅延時間の観測的導出法の不定性評価、(3)ライマンアルファ輝線放射天体(LAE)の物理的性質への予言。(1)・(2)では共に、これまで観測的に取られてきた伝統的手法の妥当性を吟味した。(1)に関しては、伝統的手法を用いることで星形成史を最大で3倍程度過大評価するという結果を得ており、現在共同研究者らと議論を重ね、論文を執筆中である。(3)は、観測的に求めるのが困難な物理的性質に制限を加えることで、LAEが銀河の形成・進化史においてどのような段階にある銀河なのかを明らかにし、また観測への指針を与えるものである。こちらも現在共同研究者らと議論を深め、論文を執筆中である。 また、同じ銀河形成の理論モデルを用いた共同研究として、以下のような研究も行ってきた:(4)LAEの新しい観測データを用いた当時の宇宙の銀河間物質の中性度に対する制限、(5)星形成銀河からのγ線背景放射への寄与評価、(6)フェルミ宇宙望遠鏡による遠方ブレーザー探査における赤外線背景放射による光学的厚み評価。私の理論モデルでは、任意の時代における個々の銀河の星形成史が評価できるため、こうした種々の理論的研究を行うことが可能である。これらの共同研究に関しては全て査読付論文誌に結果を出版済みである。
|