私がこれまでに開発してきた銀河形成の準解析的理論モデルである「小林モデル」を用いて、主体的に以下の研究を行ってきた:(1)ライマンアルファ輝線放射天体(LAE)の物理的性質への予言、(2)宇宙の星形成史における、ダスト減光補正および紫外線連続光光度と星形成率間の変換定数の不定性評価、(3)Ia型超新星の遅延時間を求める観測的導出法の妥当性評価。(1)は、LAEは銀河形成および宇宙の再電離を探るうえで重要なターゲットであるにも関わらず、観測的にはその物理的性質を求めるのが困難であるため、理論的に制限を加えることで観測への指針を与えるものである。研究結果は既に学会で発表し、現在論文を執筆中である。(2)・(3)は共に、これまで観測的に用いられてきた伝統的手法の妥当性を評価するものであり、結果は既に得られており、現在論文を執筆中である。 また、小林モデル自体の質的拡張作業も行い、様々な望遠鏡のフィルターに対応した銀河光度の計算や、銀河内ダストの減光曲線の選択なども可能にした。この拡張によって、これまで以上に汎用性の高い、様々な観測データとの比較や予言を可能にするユニークなモデルにすることが出来た。 その他にも小林モデルを用いて、日本が打ち上げを計画している天文衛星「SPICA」および「WISH」、また、日本が参加する次世代超大型地上望遠鏡「TMT」などによる遠方銀河探査における銀河の検出期待数評価も、依頼を受けて行ってきた。これらの結果はこれら衛星・望遠鏡のワークショップなどで既に発表しており、SPICA・WISHにおいては搭載フィルターの選定において重要な役割を担っている。これらの結果は査読付き論文雑誌に論文を投稿する予定である。
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