研究概要 |
官能基を末端に有するチオール類が吸着した金ナノ粒子の効率的合成法の開発をおこなった。チオール誘導体を効率的に合成するために,チオール基の保護基として高い化学的安定性を示すものの,金属により脱保護されるという性質を有するテトラヒドロピラニル(THP)基を用いた。チオール誘導体,および塩化金酸のテトラヒドロフラン(THF)溶液にトリエチルシランや水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を加えることで,THP基の脱保護を経ることなく金ナノ粒子を直接合成することに成功した。 デカンチオールと塩化金酸より得られた金チオラートに添加剤としてトリブチルホスフィンを添加することにより,THFやジエチルエーテルなどのエーテル類だけでなく,塩化金酸を溶解しないトルエンやヘキサンにも可溶な錯体が得られることを見出した。その錯体の溶液に還元剤としてフェニルシランを加えることで,様々な有機溶媒中での球状金ナノ粒子の合成に成功した 表面上にヨードフェノキシ基の導入された金ナノ粒子を基質として,鈴木・宮浦カップリング反応を試みた。金ナノ粒子に反応性が高く,穏和な条件でカップリング反応を進行させることで知られる,ピストリターシャリーブチルホスフィンパラジウム触媒存在下,THF溶媒中で炭酸カリウム水溶液を塩基として金ナノ粒子とボロン酸エステルを25℃で反応させた。反応終了後,粒子が凝集していない均一な溶液が得られたものの,単離した粒子は部分的にしか有機溶媒に再分散しなかった上,その^1H NMRスペクトルを測定したところ反応の進行は確認できなかった。
|