研究概要 |
本研究では、ポリオキソメタレートを基盤とした多核金属活性点構造の創製とその特長を活かした高機能触媒の開発を行うことを目的としている。これまでに活性点構造を明らかにしたジルコニウム、ハフニウム置換ポリオキソメタレート(Zr2,Hf2,Zr4,Hf4)、アルミニウム置換ポリオキソメタレート(Al2)に関して、金属核を架橋している水酸基について電位差滴定によりキャラクタリゼーションを行った。Zr2、Zr4はすべての架橋水酸基がブレンステッド酸点として機能するが、Al2の架橋水酸基は滴定によるブレンステッド酸性は確認できなかった。Al2はIR、^<29>Si NMR、^<183>W NMR、電位差滴定、X線構造解析によりキャラクタリゼーションをおこない、ピリジンとの反応により、ルイス酸点を明らかにした。また、Al2を触媒とした(-)-シトロネラールの分子内環化反応では(+)-イソプレゴールが87%のジアステレオ選択性で得られた。この値はこれまでの報告例と比較しても、同等、あるいはそれ以上であることが明らかとなった。(J.Am.Chem.Soc.2008,130,15872-15878) さらに、新規3d金属置換ポリオキソメタレートの合成を検討した。これまで、多核3d金属核構造を有するγ-Keggin構造は報告されていない。従来、水溶液中での合成が試みられてきたが、異性化、単核のみの置換と、多核構造を構築するのが困難であった。そこで、当研究室において単離に成功した[γ-SiW_<10>O_<36>]^<8->のテトラブチルアンモニウム塩(TBA-SiW10)を用いて、有機溶媒中での合成を検討した。過酸化水素を用いた2-シクロヘキセン-1-オールの酸化反応ではTBA-SiW10を触媒とするとエポキシアルコールが多く生成し、亜鉛アセチルアセトナート錯体では反応が進行しない。一方、TBA-SiW10と亜鉛アセチルアセトナート錯体を混合すると、2-シクロヘキセン-1-オールの酸化反応においてエノンが高選択的に生成し、TBA-SiW10とは異なる反応性を示した。そこで、TBA-SiW10と亜鉛アセチルアセトナート錯体をアセトン中で反応させることにより亜鉛置換ポリオキソメタレート(Zn4)を合成することに成功した。化合物Zn4の構造は単結晶X線構造解析により明らかとした。(Angew.Chem.submitted.)
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