研究概要 |
紫外線カメラ観測装置を用いて、2010年9月に活発な噴火活動を続けている桜島火山にて、噴火前兆現象としての二酸化硫黄放出率変化の測定を目的とした観測を二週間に渡り行った。この観測により、噴火が起こらない日の桜島火山の二つの火口:昭和火口及び南岳火口からの火山ガス放出率分離に成功した。その結果、噴火がない活動期は噴火がある活動期に比べて数倍火山ガスの放出率が少ないという事がわかった。 前年度に観測を行った浅間山の長周期地震を伴う噴火現象における火山ガス放出量について、地震波データとの精密な比較・検証を行った。その結果、火山ガス放出量と地震波の規模との間に正の相関関係が見出された。この結果は地震波発生モデルとも整合的である。また、この関係を用いれば定常的に行われている地震波観測のデータを用いて、噴火に対応する火山ガスの放出量を見積る事が可能である。この結果を現在論文にまとめ、雑誌[Geophysical Research Letters]に投稿中である。 また、同じく前年度に行った桜島での火山ガス放出率観測結果について、他の地球物理観測データ(空振・伸長計・傾斜計)との比較を行った。その結果、空振を伴う爆発的噴火の20-30分前に火山ガス放出率が減少し、更に噴火前10分前に火山浅部が膨張(伸長計応答)が見られ、膨張開始に伴う激しいガス放出率変化が観測された。また、噴火の2,3分前に浮力に乏しい噴煙塊の噴出が観測された。この現象は先行研究(Iguchi et al.2008)の桜島における噴火モデルともよく合う。また、この観測結果は火山ガス放出率モニタリングが噴火予知に応用できる可能性を示唆している。この成果について、AGU及びCOV6の二つの国際学会で口頭にて発表を行った。
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