本研究の目的は、トランジスタ構造を用いた有機材料における高効率・高輝度発光の実現である。発光トランジスタはレーザーを含めた高輝度発光素子実現の可能性があり、非常に注目されている。高輝度な発光を実現するためには、より光りやすい材料(高効率発光材料)に対して、可能な限りの大電流(高電流密度)を実現する必要がある。そのため本研究では、高発光効率と高電流密度の両立を実現するために、高効率発光材料の有機単結晶を用いた研究を行った。本年度は高効率発光材料の有機単結晶に対して発光トランジスタを作製し、トランジスタからの発光観察を行った。デバイスからの高輝度な発光を観察し、高発光効率および高電流密度の両立を示唆する結果が得られた。また、発光観察装置の構築を行い、トランジスタからの発光を詳細に測定・解析した。有機材料のバンド内準位からの発光など発光トランジスタに関する新しい知見が得られ、単結晶トランジスタの最適化条件を構築することに成功した。また当初の計画に加えて、高密度のキャリア蓄積によるさらなる高電流密度を実現するために、電解質をゲート絶縁層に用いた研究も行った。本年度は広範な材料およびデバイス構造に対して電解質ゲートトランジスタを作製し、それらの探索を通してデバイス最適化の条件を構築することに成功した。来年度はこの手法を高効率発光材料に展開し、新しい発光素子を実現したい。
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