本研究の目的は、トランジスタ構造を用いた有機材料における高効率・高輝度発光の実現である。発光トランジスタはレーザーを含めた高輝度発光素子実現の可能性があり、非常に注目されている。高輝度な発光を実現するためには、より光りやすい材料(高効率発光材料)に対して可能な限りの大電流(高電流密度)を実現する必要がある。本研究では、そのための手法として、高発光効率と高電流密度を両立するために高効率発光材料の有機単結晶を用いる手法、そしてキャリアを高濃度に蓄積しさらなる高電流密度を実現するためにゲート絶縁膜に電解質を用いる手法の独立した二つの手法を用いた。 まず、高効率発光材料の有機単結晶に対して発光トランジスタを作製し、発光測定・解析を行った。結果として、結晶端面から観察される高輝度発光の観察に成功し、高電流密度および高発光効率の両立を示唆する結果を得るとともに、高輝度発光の由来を理論的に解明することに成功した。 さらに、広範な電解質材料およびデバイス構造の探索と最適化を行い、イオンゲル電解質の薄膜を絶縁層として用いたトランジスタを作製した。イオンゲルを用いた単結晶トランジスタにおいて、初めてトランジスタ駆動させることに成功した。また、電極材料の選択によってトランジスタの極性を制御することに成功し、有機材料を用いた電気二重層トランジスタにおいて、初めて両極性伝導の観察に成功した。今後この構造を用いた高電流密度および発光観察が期待される。
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