Fermiレベルに大きな状態密度を持つパラジウムにコバルト原子をドープすることで巨大磁気モーメントが現れる磁性ナノ粒子の機能化を3つの側面で大きく発展させることができた。一つ目は、磁性ナノ粒子間を柔軟性のあるアルキル鎖で連結でナノポア空間を持つ磁性ナノ粒子架橋構造体「磁性スポンジ」を作り出すことに成功し、磁場を印加することで磁気双極子相互作用をコントロールしナノポア体積を制御して磁性スポンジを膨らませたり潰したりその形状を制御できることが明らかとなった。この形状変化により、磁性スポンジ内に蓄えられていた分子の貯蔵放出を磁場の切り替えによってコントロールすることが可能となった。二つ目は、体内に多く存在するカルシウムイオンに注目し、カルシウムイオンの吸着サイトを磁性ナノ粒子の表面に取り付けることによってカルシウムイオン濃度に依存した凝集状態を持つ磁性ナノ粒子集合体の磁性の研究を行ったところ、濃度によって磁性と凝集状態(二量体、三量体)をコントロールできることが明らかになった。詳細な機構については継続して研究を行う予定である。最後に、磁性ナノ粒子の化学的機能性を調べるために、理化学研究所魚住グループと共同研究を行い、水中でアルコールを酸化が機能する初めての磁性ナノ粒子触媒の開発に成功し、磁性機能と触媒機能を結びつける糸口を見つけた。 この三つの異なる磁性ナノ粒子の機能化の発展が、将来、ナノサイズの分子ふるい、センサー、イオン交換、気体貯蔵、触媒、ドラックデリバリーの応用の基礎的な研究になり、応用展開も見込め、磁性ナノ粒子の新しい展開の提示をすることができる有意義な研究である。
|