本研究は、タイドプールという閉鎖環境を利用した方法で潮間帯岩礁域に生息する魚類を定量的にサンプリングし、正確なバイオマスに基づく群集構造および優占する食性グループを明らかにすることを目的の一つとしている。平成21年度の調査は、鹿児島県大隅諸島に位置する屋久島の潮間帯岩礁域において22ヶ所のタイドプールを選び、それぞれのプールから海水を抜いて容積を計測し、そこにいた魚類を全て採集することで、魚類相や分布パターンを明らかにするだけでなく、魚類のバイオマスを正確に示すものである。実際の調査では、春季(5月)、夏季(7月)、秋季(10月)、冬季(2月)の4シーズンの環境データの採取およびサンプリングを終えることができた。この調査に関して、従来の知見と将来的な貢献についてまとめ、オーストラリア・パースで開かれた8th Indo Pacific Fish Conferenceで発表を行った。ここで採取したサンプルやデータに関しては平成22年度に解析を行い、論文としてまとめる予定である。上記に加え、自らが企画・講師を務め、屋久島内の小・中学生20名ほどと保護者を集めた潮間帯岩礁域における環境教育活動を行った。このイベントでは、自らの調査に基づく手作りの簡易図鑑を子供たちに事前に配り、自主勉強を託した後に観察会を行うことで、子供たちへの環境教育のより一層の効果を上げられるよう配慮した。この試みとアンケート調査により、野外における研究調査が環境教育にも役立つことが明確になった。
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