本研究は、奴隷交易に携わる人々の変容からインド洋西海域世界に於ける近代を考察することを目的とするものである。今年度は、論文2点を発表し(学術雑誌1、論文集1)、10点の研究報告を行った(うち、国内8、国外2)。 交付申請書に記した資料調査の予定については、その多くを実施することができた。7月後半には3週間弱、ボストンで調査を行った。また、8月には3週間強、インド、湾岸での調査を行った。これらの調査からは、ボストンでは平成22年度科学研究費補助金交付申請書のなかで表明した研究目的1、インドでは、平成22年度科学研究費補助金交付申請書のなかで表明した研究目的2に関する資料を得られた。またこれらに加えて、今後現在の研究を発展させうる非常に興味深い資料も得られた。 9月の末から10月の前半にかけては、イギリスとアラブ首長国連邦で調査を行った。イギリスでは資料の収集とともに、現地の研究者との情報交換の機会も得られた。 交付申請書に記した2つの目的(1.インド亜大陸西岸に関する奴隷流通が及ぼすインド洋周縁諸地域への影響の解明、2.交通革命による蒸気船の登場に伴う流通の変容)は、今年度7月に提出した博士学位請求論文のなかで部分的に取り扱った。 また、本年度の目的には挙げていなかったが、1月から2月にかけては、インドでの調査を踏まえて、本研究の重要課題である国籍問題について、海外の研究者たちに対しても成果を披露した。
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