本年度は、2本の論文と13本(日本語8本、英語5本)の学会報告を行った。 論文「サイード・ビン・スルターン没後のアフリカ大陸東部領土相続をめぐる経緯-奴隷流通構造における沿岸部スワヒリ社会の機能変化に関する追論-」は、2009年に発表した「奴隷流通構造における沿岸部スワヒリ社会の機能変化」について、発表後に収集した資料に基づき、この問題について、国際関係を視野に入れた考察を行った。また、「インド洋西海域における『奴隷船』狩り-19世紀奴隷交易廃絶活動の一断面-」では、インド洋西海域の奴隷交易について、それを廃止しようとする側から考察したものであり、これによって、本研究は、奴隷交易をめぐって、それを行う者のみならず、それを廃止しようとする者の側からの考察を踏まえることができた。これらの研究は、これまで本研究が行ってきた文献調査の成果を踏まえている。 学会報告については、これまでの研究成果をより広い文脈に位置づけることを念頭にして報告を行った。ここでいう「より広い文脈」とは、具体的には、比較や連関を念頭に置いた、世界史ないしはグローバルヒストリーを指している。 今年度は、また、インド、イギリス、ペルシア湾岸での現地調査も実施した。特にインドでの調査成果は、部分的に報告"Kachchhi Bhatiya's Commercial Activities and their Networks in the 19th Century"に反映されているが、より明確には、現在執筆中の数本の学術論文に反映する予定である。 また、今年度には刊行されなかったものの、すでに校了済みの英語論文(History in Africa次号に掲載)が存在する。これによって、本研究の成果をより多くの読者と共有できると考えている。
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