MRI (Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)の高速な撮像手法の確立により、妊娠女性に子宮筋腫や胎児奇形が疑われる場合に、MRIが妊娠女性の画像診断に利用されることがある。MR画像を撮像する際には、高周波の電磁波を被検体に照射する必要があるため、近年では妊娠女性および胎児内電磁波エネルギー吸収量の評価が国際的に求められている。本研究では、前年度までに確立させた計算機シミュレーションモデルを用いて、MR撮像時の妊娠女性および胎児内における温度上昇と発汗作用や血液温度の時間変化の影響について検討を行った。その結果、汗腺が少ないモデルにおいて、母体や胎児内の温度上昇がICNIRP (International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection :国際非電離放射線防護委員会)の推奨指針値を超えてしまうケースがあるものの、実際にMR撮像時に要する時間で評価した場合、その推奨指針値を超えることはないことが明らかになった。 ところで、電磁波エネルギー吸収量を定量的に評価するためには、アンテナと給電線路間のミスマッチングを改善することが重要である。そこで、アンテナの実使用条件を考慮に入れ、集中定数素子と同軸ケーブルから構成される整合回路を設計し、良好なインピーダンス整合を実現した。具体的には、アンテナに整合回路を装荷する前の反射電力は、入射電力に対して50%であったのに対し、装荷後は10%未満のレベルまで改善することができた。本成果によって得られた整合回路は、医療用アプリケータを設計する上でも有益なデータとなると考えられる。
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