研究課題
彗星核の化学組成比等を用い、原始太陽系円盤内の物理的・化学的環境を明らかにするために、本研究では彗星の近赤外線高分散分光観測を主に行う。また、それによって観測される彗星コマ中の分子の輝線、空間分布モデルや、原始太陽系円盤における物質の化学進化モデルの構築を行う。本年度は、22P/Kopff彗星と81P/Wild 2彗星の近赤外線高分散分光観測を、すばる望遠鏡とKeck 2望遠鏡を使用し行った。中でも81P/wild 2彗星は、NASAの彗星探査ミッション「STARDUST」のターゲットでもある。このミッションにおいて、彗星内に含まれている塵を実際に地球へと持ち帰り成分などを分析することに成功しているが、コマ中に含まれるガス分子についてはあまり詳しく調べられていない。我々の観測は本年度末に行ったため現在データ解析中であるが、質の良いデータを得ることができている。また、本年度はコマ中の分子の空間分布モデルを構築するために、Southwest Research InstituteのD.Boice博士と共同研究を始めた。コマ中分子の空間分布モデルは、既にいくつか構築されていはいるが、それらのモデルは簡単すぎて、観測を実際に再現することができない。そこで我々は、コマ中分子同士の化学反応を考慮し、より現実的なモデルを構築することを目指している。本年度はコマ中HCN分子に着目し、HCN分子の空間分布を再現することに成功した。また、3月にはBoice博士の研究所に1週間滞在し、モデル構築の実作業を行ったほか、今後の方針等について議論をすることができた。本年度は彗星氷の化学組成比に関する4本の論文(うち2本が筆頭著者)を出版し、投稿中の論文が1本ある。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
Astronomy and Astrophysics 509
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