研究概要 |
彗星核の化学組成比等を用い、原始太陽系円盤内の物理的・化学的環境を明らかにするために、本研究では彗星の近赤外線高分散分光観測を主に行う。また、それによって観測きれる彗星コマ中の分子の輝線、空間分布モデルや、原始太陽系円盤における物質の化学進化モデルの構築を行う。本年度は、103P/Hartley 2彗星の近赤外線高分散分光観測をKeck 2望遠鏡を使用し行った。この彗星は、NASAの彗星探査ミッション「EPOXI」のターゲットでもあった。このミッションは系外惑星探査と彗星探査の混合ミッションで、探査機がHartley 2彗星に接近し、彗星核の画像やスペクトルを得るというものである。探査機と彗星が最接近した際に地上からも観測を行っており、それらのデータに関しては論文誌に投稿済みである(Dello Russo et a., ApJL. in press)。また、DC1に採用される以前に取得していた46P/Wirtanen彗星における水の生成率の経年変化に関する論文を執筆した。水の生成率の経年変化に関する論文は過去にほとんど執筆されていないが、この論文の結論は、46P彗星はこの10年間では経年変化がみられないかったというものである。また、本年度は赤外線衛星(あかり)を使用した彗星の分光観測(H_2O、CO、CO_2サーベイ)の共同研究を開始したほか、彗星の形成環境(彗星に取り込まれている分子の形成温度)に密接に関連しているチリ表面反応に関する研究を開始した。あかり衛星を用いた研究成果に関しては国際学会で発表し、これから論文を作成する。チリ表面反応は、C_2H_2、C_2H_4、C_2H_6分子に着目して行っている。中でもC_2H_4分子は彗星コマ中では未検出の分子であることから、発光モデルの作成から研究を行っており、初期成果を国際学会で発表した。
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