Yb系の重い電子系では初の超伝導体であるbeta-YbAlB_4や、YbRh_2(Si_<0.95>Ge_<0.05>)_2、CeCu_<5.9>Au_<0.1>等で見られる新しい量子臨界現象を理解するために、beta-YbAlB_4と同組成で結晶構造の異なるalpha-YbAlB_4のAlサイトの一部をFeと置換し、量子臨界点に隣り合う2つの相を詳しく調べた。その結果、フェルミ液体の性質を示すalpha-YbAlB_4は、数パーセントのFe置換により磁気秩序が現れることを見出した。また、それに付随する量子臨界現象を極低温における電気抵抗、磁化、比熱の測定より明らかにし、それが量子臨界物質beta-YbAlB_4と類似していることが分かった。また、これらの現象が、大変興味深いことに、価数の変化に伴う可能性をSPring8での硬X線光電子分光実験から明らかにした。これらの成果は、量子臨界性と価数揺らぎを結ぶ可能性を世界で初めて明らかにするものであり、その発展が今後大いに期待される。また、ゼロ磁場で非フェルミ液体的な振る舞いを示すbeta-YbAlB_4のab面内に磁場をかけても非フェルミ液体状態が保持されたまま非フェルミ液体性が顕著になる。米国Tallahasseeにある国立強磁場研究所へ出張し、20Tまでの強磁場中で電気抵抗測定を行ったところ、非弾性散乱項が磁場により大きくなることが分かり、20T以上の高磁場に量子臨界点が存在する可能性が示唆された。
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