本研究の目的は、2004年10月23日に発災した新潟県中越地震の被災集落(長岡市、旧山古志村(現長岡市)旧栃尾市(現長岡市)、小千谷市、旧川口町(現長岡市)、十日町市の被災集落32地域)の被災者へ、曲線を用いた独自のインタビュー調査を、平成21年度、平成22年度、平成23年度と計3回同一被災者へと実施し、復興過程の理論的研究を射程に捉え、災害に遭った被災者自身がその復興過程をどのように意味づけるのか、復興過程の意味づけに経年による変化は存在するのか、またどのような要件があれば被災者や被災地域が前向きに次の生活へと踏み出していくことが可能になるのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、被災者へのインタビュー調査に加え、研究の拠点をアメリカ合衆国デラウェア大学のDisaster Research Centerに移し、海外における災害復興に関する文献渉猟と、研究の発信を行った。アメリカの災害研究においてもこれまで長期的な復興に関する研究が希少であったこととその必要性が強調されており、本研究は高い関心を得ている。また、曲線を用いた独自のインタビュー方法については、災害研究以外の研究者からも優れた質的研究のツールとして評価が得られた。被災者・被災地がどのように災害から復興していくのかを捉えることは、災害が平時の社会課題をより先鋭化させた形で露呈させることを鑑みれば、単に災害からの回復に留まらず、現代社会のさまざまな課題の解決法の糸口へとつながると考えられる。
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