ヘテロ界面における電子状態の対称性を選択的に検出することができる第二高調波発生(SHG)をプローブとして、界面の光誘起ダイナミクスを検出するための光ポンプ・SHGプローブ分光系を構築した。試料作製については、パルスレーザー堆積法により、初期層として無限層BaCuO_2を2-4原子層堆積することで、RHEED振動を観測しつつ、原子層レベルで構造が制御された無限層銅酸化物ヘテロ界面の作製に成功した。 無限層銅酸化物ヘテロ界面としてSrCuO_2とBaCuO_2に着目し、超格子、SrCuO_2バッファー層上のヘテロ界面、単一ヘテロ界面の構造を持つ試料を作製し、光ポンプ・SHGプローブ分光測定を行った。単一ヘテロ界面のみ、面直方向の分極成分に由来するSH強度が増大し、その他の場合は減少した。単一ヘテロ界面では、ヘテロ界面を介した光キャリア注入によるキャリアの偏りでSH強度が増大し、その他の場合には、ヘテロ界面以外の部分で生成した光キャリアによるスクリーニングの効果でSH強度が減少したと考えられる。以上より、無限層ヘテロ界面を介した光誘起キャリア注入を実現することができ、界面における光誘起ダイナミクスについての知見が得られた。 昨年度、東工大腰原グループとの共同研究で行ったNd_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3薄膜における「隠れた」電子状態についてNature Materialsに論文が掲載され、熱平衡状態では実現できない相が光励起により過渡的に生成されることを示した。また、1発のパルス光でスペクトル強度のシフトが起こり、長時間安定に存在する「隠れた」定常光誘起相について、転移温度が75Kであること、電荷軌道秩序に由来するSHGが増強され、磁化の状態を反映するKerr回転角に変化が見られないことが分かった。これらは、光誘起相転移によって熱平衡状態では到達出来ない安定相を実現した最初の例である。
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