研究概要 |
平成21年度は、細菌Cellulosimicrobium cellulans由来endo-1,3-β-glucanaseについて、同酵素触媒ドメインの構造機能解析を行った。各種アミノ酸変異体を用いた活性測定では、基質結合及び触媒反応への関与が示唆されるアミノ酸をいくつか同定することができた。また、等温滴定型熱量計を用いて、各種β-1,3オリゴ糖及びβ-1,3-β-1,6多糖との相互作用を熱力学的に解析した。同実験により得られた熱力学的パラメータから、6糖の結合様式は他のオリゴ糖と異なることなどが示唆された。β-1,3-β-1,6多糖との相互作用解析では、結合力はオリゴ糖と同程度であることが明らかとなり、また、1分子の多糖に複数の酵素分子が結合することが示唆された。その後、複数の酵素分子が結合し得るのかどうか確認するため、超遠心分析を追加実験として行い、実際に2分子及び3分子の酵素が1分子の多糖に結合し得ることを明らかにした。本実験結果は、endo-1,3-β-glucanase及び他の関連酵素を含めても新規であり、同触媒ドメインの糖認識機構の解明のみならず、同酵素を蛋白質工学的に改変するためにも重要な基礎情報となるだろう。酵素基質複合体のX線結晶構造解析では、結晶化スクリーニングを行い、蛋白質濃度、バッファー条件について検討し、いくつかの結晶を得ることができた。現在、これらの結晶について解析を行っている。細菌由来endo-1,3-β-glucanaseの酵素基質複合体のX線結晶構造解析結果は、これまで報告されておらず、本実験は同酵素の構造機能解析に向けて、極めて重要である。
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