弱毒生ワクチンは病原性復帰する可能性があることが問題である。抗ウイルス薬リバビリンに耐性化するために必要な変異を持ったポリオウイルスは複製忠実度が高く、病原性が低くなることがわかっている。ポリオウイルスと同じRNAウイルスであるインフルエンザウイルスにおいても、リバビリン耐性ウイルスを獲得できれば、安全な生ワクチンが作製できる可能性がある。そこで本研究においては、インフルエンザウイルスリバビリン耐性に必要な変異を同定し、その変異を導入した新規弱毒生ワクチンの作製を目的とした。まずインフルエンザウイルスに対するリバビリンの効果を調べた。ポリオウイルスでは、リバビリン存在下で培養すると、ウイルスゲノムRNAがCからUにあるいはGからAへとランダムに変異し、その結果ウイルス増殖抑制される。インフルエンザウイルスの場合でも同様の作用機序で増殖が抑制されるか調べた。MDCK細胞にウイルスを感染後、リバビリン存在下で48時間培養し、培養上清を回収した。ウイルス遺伝子をクローニングし、シークエンスを調べた。その結果、28クローン中13クローンで変異が導入されており、そのすべてがCからUあるいはGからAの変異であった。これらの結果からインフルエンザウイルスでもポリオウイルスと同様の機序でウイルス増殖が抑制されており、複製忠実度の高いウイルスを獲得できる可能性が高いことが示唆された。またリバビリンの有効濃度を調べたところ、20μMでウイルス増殖を50%抑制することがわかった。そこで、20μMおよび40μMのリバビリン存在下でインフルエンザウイルスを継代した。11代まで継代したが、耐性ウイルスは獲得されていない。今後も継代を繰り返す予定である。またリバビリンだけでなく、ほかの同様の活性を持ちリボ核酸類似物を用いて耐性ウイルスの獲得を試みる予定である。
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