地域一般生活者集団の子ども及びその親の殺虫剤尿中代謝物量をガスクロマトグラフ/質量分析計を用いて測定した。大人と子どもの尿中代謝物濃度の幾何平均値(μg/L)は、有機リン系殺虫剤(OP)代謝物についてはジメチルリン酸8.2と8.0、ジエチルリン酸2.9と3.5、ジメチルチオリン酸2.7と3.6、ジエチルチオリン酸1.0と1.2、ジアルキルリン酸(DAP)19.2と21.9、ピレスロイド系殺虫剤代謝物についてはジメチルシクロプロパンカルボン酸0.3と0.3、3-フェノキシ安息香酸(3PBA)0.4と0.4であった。いずれの代謝物濃度も大人、子どもそれぞれで性別による有意差はみられず、また、大人と子どもの間に有意差はみられなかった。また、家族ごとのDAP濃度は親子全員の尿中代謝物濃度がほぼ同レベルの家族と、家族の構成員間で代謝物濃度が大きく異なる家族が存在した。家族ごとの3PBA濃度はDAP濃度程大きく異なる家族はなかった。尿中代謝物濃度をクレアチニン補正した場合、大人と子どもの間に有意差はみられた数値もあったが、子どものクレアチニン濃度が大人よりも低値を示すこと、補正前の数値に有意差がないことから、曝露レベルはほぼ同じと考えられた。親子のOPの尿中代謝物濃度範囲の幅は家族により大きく異なったが、生活習慣や食事等の違いにより変動する可能性が考えられた。今回は少数例の検討にとどまっているため、子どもの曝露量についてはさらに例数を増やして検討を行う必要がある。
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