研究概要 |
組込みシステムの性能や計算精度を保証しながら消費エネルギー最適化を実現することは,非常に重要な課題である.本研究では,省消費エネルギーでありソフトウェア制御のオンチップSRAMであるスクラッチパッドメモリ(SPM)の活用に着目し,組込みシステムのプロセッサおよびメモリシステムを対象とした消費エネルギー最適化技術の確立を目指す. 平成22年度では,まず,前年度から行ってきた研究の継続で,シングルプロセッサーマルチタスク環境で適用できる,命令SPMの効率的かつ柔軟な活用を実現する手法を提案した.さらに,この研究をデータSPMに適用できるよう手法を拡張した.高いリアルタイム応答性が要求されるマルチタスク環境において,タスク毎のデータSPMへのデータ割当ておよび各タスクへのデータSPM領域の分配量は,消費エネルギー最小化を目的関数として定式化した整数計画問題により決定される. 次に,組込みリアルタイムシステムのアプリケーション開発における消費エネルギー最適化開発支援フレームワークを提案した.本手法は,複数の要素技術を統合的かつ段階的に適用することで,リアルタイム性を保証しつつ,システム動作時の平均消費エネルギーを最小化する.本フレームワークは,タスク毎とタスク間の解析・最適化,および,リアルタイムOSによる実行時最適化の3段階に分かれる.プログラム設計時の解析・最適化は,まずタスク単位でその性質を解析し,単体最適化を行った上で,タスク間の解析・最適化を適用する.リアルタイムOSは,設計時最適化によって得られた情報を活かすことにより,アプリケーション実行時の消費エネルギー最小化を実現する.
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