研究概要 |
外洋性渦鞭毛藻類を入手するために主に以下のような採集を行った。1)長崎大学水産学部附属実習船鶴洋丸による航海によって、五島灘海域3地点において月に一度の採水を行った。2)2009年5月18日から23日まで琉球大学瀬底実験所に滞在し、瀬底実験所の船を利用し沖合において2回(5月19日と22日)採水を行った。3)2009年6月17日から27日の長崎大学附属練習船長崎丸第284次航海において長崎県新長崎漁港~沖縄県西表島を往復の間に掛け流し海水濾過による採集を20回行った。4)長崎県総合水産試験場の協力によって、月に一度、五島列島北西海域3地点の海水を得た。 外洋性であり藍藻類を共生体として持つディノフィシス目5属10種13個体,外洋性であるNeoceratium属26種49個体を得た。ディノフィシス目については,これまでのデータに加え,藍藻類を細胞内に共生させているAmphisolenia属の共生藍藻の遺伝子配列を得ることに成功し,細胞外に共生しているものと比較することで,共生藍藻の類縁関係や共生関係確立の進化的機構を知る重要なデータである。Neoceratium属については,今年度以前から保持しているNeoceratium属の125個体からのリボゾーム遺伝子増幅も行い,合計49種(変種・品種含む)97個体のデータを得て解析した。Neoceratium属については、これまで後角の長さや曲がり具合の違いで多くの変種や品種が記載されてきた。しかし、本研究の結果からその多くはすでに遺伝的に分化しており種として扱うべきであることが示された。Neoceratium属では、前角と後角は自切することが知られており、自切による長さの違いは個体間の差異である。しかし、後角の伸びる方向や曲がり具合は、変種や品種ではなく"種"を特徴づける形態形質として有意義であると考えられる。また、これまでNeoceratium属内には4つの亜属が設立されているが、2つは側系統群となり属内分類体系の見直しが必要である。Neoceratium属はこれまで120種(変種・品種含む)以上が記載されているが、本研究では約3分の1の形態観察と遺伝子配列の決定に成功したことになる。
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