研究概要 |
これまでの研究では、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いてカーボンナノチューブトランジスタ(CNT-FET)の電気伝導特性の評価、解析を行ってきた。例えば、磁気力顕微鏡(MFM)や局所ゲート顕微鏡(SGM)などを用いる事で、個々のCNTにおいて電流量、伝導型、閾値が異なる事を明らかにした。本年度は、これまで培ったSPM技術を用いてネットワーク状に分散したCNTをチャネルとした薄膜トランジスタ(CNT-TFT)に対する電気伝導特性の解析・評価を行った。更にデバイス応用への指針を示すために、CNT-TFTの集積回路作製を試みた。 『SPMを用いたカーボンナノチューブ薄膜トランジスタの電気伝導特性の評価・解析』 グリッド挿入型プラズマCVD(PECVD)法で成長したCNTをチャネルに用いたCNT-TFTに対して、これまで培ってきたSPM技術(KFM,C-AFM,SGM)を用いて総合的に解析した。その結果、サブスレッショルド領域において、テラス状の電位分布像や島状の抵抗分布像が得られた。このことから、サブスレッショルド領域では、高いCNTの密度にも関わらず島状のチャネルが形成される事を示している。更に得られた結果を検証するために、SPICEを組み合わせたモンテカルロシミュレーションを行い、実験結果との比較を行った。 『PECVD法によるCNT-TFTの集積回路の実現』 これまでの研究において、PECVDを用いてCNT-TFTを作製し、高電流密度や電気伝導のバラつきが小さいCNT-TFTが得られている。このような結果から、108個のCNT-TFT(PECVD法でCNTを成長)から構成された53段Ring Oscillator回路を作製した。53段Ring Oscillatorを動作させたところ、遅延時間が0.51μsとこれまでの報告例と比較して2ケタ小さい高速動作を実証した。同時に中規模集積回路を実現した。
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