本年は、報告例がほとんどない加圧成長窒化ガリウムインジウムの作製技術の検討と従来成長によるp型窒化ガリウムインジウムの作製を行った。 加圧成長窒化ガリウムインジウムでは、特に作製温度やガス供給量など熱力学的に期待される作製条件の自由度の向上を活用し、最適な作製技術の探究を進めた。理論的に改善が期待される加圧成長法を窒化ガリウムインジウムの結晶成長技術に組み込むことを検討した。加圧有機金属化合物気相成長装置を用いて、その成長圧力を1気圧から2気圧に加圧することで、窒化ガリウムインジウムのインジウム組成が高くなることが分かった。成長圧力はもちろんのこと、成長温度による影響も踏まえて実験結果と熱力学解析の比較を行った結果、よく一致していた。この結果から、窒化ガリウムインジウム中のインジウム組成の増加は成長圧力の上昇による効果であることが立証できた。 p型層の成長では、成長温度が高いと発光層の窒化ガリウムインジウムの熱分解により発光層に欠陥が入り、非発光再結合準位が増大してしまうため、p型層の低温成長が必須である。本研究では、低温成長での高性能p型窒化ガリウムインジウムを用いることを検討した。本研究成果では、従来のp型窒化ガリウムと比べると大幅に正孔濃度が高くなる、及びあるインジウム組成を超えると、p型結晶の作製が困難になることが分かった。高正孔濃度また、物性評価の観点から、温度を変えたホール効果測定によりアクセプターのイオン化エネルギーを見積ったところ、窒化インジウムモル分率の増加に伴いイオン化エネルギーが低下し、さらに、窒化ガリウムよりも窒化ガリウムインジウムの方がアクセプターの補償効果も小さいことが分かった。
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