研究課題
グアニン残基の豊富な核酸塩基配列では、しばしばグアニン四重鎖構造(G4)と呼ばれる三次元構造が形成されることがin vitroで報告されている。G4を形成し得る塩基配列は主に遺伝子プロモーターにおいて見出されており、G4は遺伝子の転写調節に関わることが示唆されている。そこで本研究では、G4に対する相互作用能の高い低分子化合物の創製を目的とし、大環状ヘプタオキサゾール(7OTD)の開発および機能評価を行った。すなわち、天然のG4結合剤であるテロメスタチンの平面性に着目した分子設計を行い、大環状ヘプタオキサゾール骨格7OTDを開発した。7OTDはテロメスタチンと同等以上の強力なG4安定化活性を示すと同時に、二本鎖DNAには相互作用しないことがわかった。また、7OTDの側鎖部位における構造活性相関の知見から、7OTD骨格自身がG4と強い相互作用能を有することが示された。さらに、アミノ基を側鎖に有するL1H1-7OTDは、細胞レベルでテロメアG4への相互作用が示唆され、がん細胞に対して極めて強力な増殖抑制活性が認められた。次いで、以上の結果をもとに蛍光G4リガンドの創製とG4可視化への応用を行った。前述したL1H1-7OTD側鎖に対して蛍光官能基であるBODIPYをアミド結合により結合させ、蛍光G4リガンドL1BOD-7OTDを創製した。L1BOD-7OTDはG4と強力に相互作用し(数ナノmol/Lレベルの解離定数)本構造を可視化することに成功した。さらに、生細胞(HeLa細胞)に対してL1BOD-7OTDを添加したところ、LIBOD-7OTDは細胞膜を透過し、核内へ移行することが示された。これによりヒト細胞内においてG4が形成される可能性を示すことができた。
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