本年度は、組織的な形態をとった集合的実践(患者運動やサークル活動)を対象とした現地調査を行った。関東地方の療養所を拠点とする活動に関しては、刊行された資料集もあり、必要なデータはあるていど蓄積されている。しかし、その他の地域の療養所に関しては、聞き取り調査に基づく資料も、活動記録や議事録などの文字資料も、データの蓄積が少ない。従って本年度は、関東地方以外の療養所、および療養所出身者の自宅を訪ね、聞き取り調査と文字資料の収集を行った。 具体的には、福岡県在住の元ハンセン病療養所入所者のネットワークを頼りに、調査許可を頂くことの出来た方の自宅を訪ね、聞き取り調査を行なった。また、各地域の図書館や公文書館で、関連資料の収集を行った。その結果、長島愛生園(岡山)、菊池恵楓園(熊本)、星塚敬愛園(鹿児島)、沖縄愛楽園(沖縄)などの療養所内で行われていた患者運動・サークル活動の内実が、少しずつ明らかになってきた。これらの療養所で営まれてきた活動の歴史と、それらの活動の特色が、かなりの程度明らかになった。また、元患者の自宅を訪ねたことにより、療養所の作業日誌や職員の手記など、未刊行のものを含めた資料をかなり入手することができた。 上記のような調査を経て、関東以外の地域の運動と、関東地区の運動との関係性も、かなりの程度明らかになった。その結果、多摩生全園(東京)を拠点とする患者運動・サークル活動に関しても、これまでに知られていない新たな知見を得ることができた。
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