π共役系非環状型オリゴビロール(ジピロリルジケトンホウ素錯体)は周辺置換基修飾によりさまざまな機能付与が可能であり、効率的な分子集合化により電子・光マテリアルへの展開が期待される。実際に適切な周辺置換基修飾を施すことで、集合化形態の変調が可能であることを明らかにした(J.Org.Chem.2011)。一方、ジピロリルジケトンホウ素錯体(レセプター)はアニオンと効率的な[1+1]型平面状会合体(平面状アニオン)を形成し、対カチオンとの相互作用により電荷積層型集合体の寄与が大きいイオンマテリアル(固体やソフトマテリアル)の構築が可能であることを報告している。周辺修飾したレセプター-アニオン会合体をイオンマテリアルの構成ユニットとして用いることにより、組織体の構造制御や物性のチューニングが可能になると考えられる。実際に適切な嵩高さを有する置換基を導入したレセプター分子はオクタンと超分子ゲルを形成し、平面状カチオン塩の添加により安定な液晶相の形成を明らかにした。放射光X線による組織体構造解析により電荷種分離配置型集合体の寄与が大きいヘキサゴナルカラムナー構造を形成していることを明らかにした(Chem.Eur.J.2012)。さらに、これらπ共役系電荷種からなるイオンマテリアルが特別な精製を必要とせず良好な両極性の電荷移動特性を示すことを見出した。これとは別に、アニオンレセプターメタフェニレンオリゴマーはアニオン駆動型らせん構造を形成することを明らかにしているが、らせん状アニオン会合体の対イオンとしてキラルカチオンを共存することで、イオンペア形成を用いたらせん構造のキラル誘起が可能であることを見出した。さらに、レセプター-アニオン会合体の高い発光特性をふまえ、キラル誘起されたらせん状アニオン会合体が円偏光発光(CPL)挙動を示すことが分かった(論文投稿中)。
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