研究概要 |
本研究は,身体から得られる複数の感覚情報(視覚,触覚,自己受容感覚など)と身体の内的表象(身体イメージ・身体図式)の間にどのような関連があり,双方がそれぞれ知覚場面にどのような影響を及ぼし合うのか明らかにすることを目的としている.まず始めに,私たちが自分の身体をどのように認識しているのかを確認するために,自分の身体(部位)のイメージと実際の自分の身体との関連を検討することにした.実験参加者に自分の手をイメージさせ,手は見えない状態で,ディスプレイ上の線幅を自分の手の大きさになるように調整させた.イメージする手のポーズや実際の自分の手のポーズ,判断する手の部位,手を置く位置などの条件を変えて,各自の実際の手の大きさとイメージされた手の大きさとを比較したところ,どの条件でも,手の横(人さし指~小指)幅は比較的正確に判断されるが,手の縦(中指先端~手首)幅や直前に見た大小の円については過大判断になることが分かった.また,自分の手のポーズも判断に影響を及ぼす傾向が示された.手の横幅でのみ大きさが正確に判断されたことは,"握る"等の日常動作に重要となる部位に関しては,特に精度の高い大きさ情報が保持されている可能性を示唆する.この成果は,日本心理学会第73回大会で発表した.2点の触覚ターゲット刺激の弁別が,ディスプレイ上の様々な方向で呈示される課題に無関係な2次元視覚刺激(妨害光)や触覚刺激を受けている手の配置によって影響を受けるというこれまでの研究成果は,論文にまとめ,現在国際誌に投稿中である.また,聴覚的補完と同様に,実際には途切れた触覚刺激がノイズ刺激によってつながった触覚刺激として知覚されることを,国際誌にて発表した.
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