過去2年の研究から、プロミネンスの磁場構造を調べるには、微細構造を正確に抽出することが必要不可欠であることが明白になった。これまでの太陽観測衛星「ひので」や「SDO」の観測から、プロミネンス本体とその周囲を取り巻く構造は非常に複雑で、局所的・大局的構造を同時に考慮しなければ、観測データから正しい情報を引き出すことは難しい。そこで、まずは局所的構造について研究を進めるべく、高い精度での微細構造の抽出に焦点を当てた。今年度はプロミネンスの他に、昨年度同様磁場構造がはっきりしているスピキュールを使って、抽出技術の開発に取り組んだ。昨年度作成した「ひので」のデータ向けの微細構造の分離プログラムを、「SDO」の画像に対して適用できるよう修正し、極紫外線で見られるスピキュールを伝播する波動の統計的性質を調べた。「ひので」よりも空間分解能では劣る「SDO」のデータを使うメリットは、太陽全面の情報を同時に得ることができる点にある。これにより、統計数を格段に上げることが可能となる上、局所的な活動性との関連を調べることが容易である。一方で、分解能が低いために検出精度が悪くなるというデメリットも同時に存在する。そこで、今年度中は様々な試行錯誤や画像処理の専門家の方との議論を通じて抽出技術の発展と問題解決の方向性を探った。進行中の解析結果では、「ひので」で見られるスピキュール上の波動に比べると「SDO」では定在波の割合が多い。これは検出した波動の違い(前者は高周波波動、後者は低周波波動)によるものと考えられる。このことから、低周波波動はより多く反射され、定在波を形成する傾向にあるという理論的予測ともつじつまが合う。検出精度を向上させ、この結論の有効性を確立したい。その他、今年度は「ひので」による波動研究の成果を論文にし、国内外のセミナー・研究会にて発表し、多くの研究者と議論を行った。
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