今後のマントルダイナミクスの研究では観測とモデルの比較、および地域を絞った研究が重要となってくる。そのツールとして、観測から得られるパラメータ(例えばプレート速度や海溝の形状等)を最大限生かすような沈み込み帯の数値モデルを開発した。さらにこのモデルは球座標を用いており、地球の丸みも考慮する事が可能である。この新たなモデルについてまとめたものがEarth Planets and Spaceという国際誌で出版された。 また6月には台湾で開かれた学会(2010 Western Pacific Geophysics Meeting)に参加し発表を行うとともに海外の研究者との交流を深めた。 その後はマントルの流れから予想される地震波異方性という観測量を計算する手法を学習し、それを東北地方下のマントルウェッジで起きている可能性があるマントルの小規模対流に対して適用した。その結果小規模対流が起きている場合でも地震波異方性の向きはプレートの運動方向から大きくずれる事はないという結果が得られた。その結果を日本地震学会秋季大会で発表したところ、学生優秀発表賞を頂いた。昨年11月から約1ヶ月半の間海外インターンシップ制度を利用してアメリカ合衆国のミシガン大学へと行きそこでマントル対流の数値計算分野で有名なPeter van Keken氏のもとで研究を行った。具体的にはこれまでのマントルの計算に非線形レオロジー(歪み速度に依存する粘性則)の効果を入れる手法を教わった。これはマントルのより現実的なレオロジーを考慮できるようになったという意味で大きな進歩である。またミシガン大学から直接サンフランシスコへと移動しAGU Fall meeting 2010という学会に参加し、発表・議論を行った。
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