研究概要 |
ミトコンドリアタンパク質の膜透過機構の解明に向けて大きく分けて、以下の二つの事を明らかにした。ミトコンドリア外膜受容体のTom70は、これまでプレ配列を持たない前駆体タンパク質を認識する受容体と考えられていたが、当研究室での網羅的な解析から、Tom70の基質としてプレ配列を持つ前駆体タンパク質が5種(pAco1p、pAtp1p、pCit1p、pDld2p、pIdh1p)同定された。PURESYSTEMを用いてこれら5種類のタンパク質を合成する際に、Tom70を共存させないと、合成されたほとんどのタンパク質が不溶性となるが、精製Tom70を共存させると、可溶性になることを見出した。すなわち、Tom70はシャペロン様の機能をもつことが示された。したがって、Tom70は、プレ配列を持つ前駆体タンパク質の膜透過反応時に成熟体部分を保護する事で、膜透過反応をスムーズに行えるように助ける働きがある事が示唆された。以上の結果は、THE JORNAL OF BIOROGICAL CHEMISTRYに掲載された。 外膜受容体のTom22においてin vivo部位特異的光架橋法を用いた相互作用解析により、Tom22のサイトゾルドメインの酸性アミノ酸に富む領域、および膜間部ドメインが、前駆体タンパク質と直接相互作用する事を明らかにした。さらに詳細な解析から、基質がTom22の膜間部ドメインから内膜膜透過装置TIM23複合体の受容体サブユニットTim50に受け渡される仕組みについても,知見を得た。また、酵母細胞内で過剰発現したTom22がTOM40複合体に組み込まれる前に一過的に相互作用する因子が,サイトゾルのシャペロンであることを証明した。
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