研究概要 |
社会的場面でいかに自己を主張できるか,あるいは抑制できるかに関わる社会的自己制御能力の促進・抑制要因について,以下の観点から多面的に検討した。 1.社会的自己制御における解釈レベルとマインドセットの効果:高次解釈といった行動の"why(なぜその行為を行うのか)"を顕在化させ,主要な目標に重みづけを促す認知・思考状態を形成させることによって,社会的場面における自己制御行動が促進することを明らかにした。当該知見は,国内学会,および,国際学会(the 11th annual SPSP)にて発表し,現在,学術雑誌へ投稿中である。 2.地域社会環境が社会的自己制御へ及ぼす影響:大学生を対象にした予備調査結果をもとに,日本教育心理学会第51回総会にてシンポジウムを行った。シンポジウムでは,(1)地域住民の協力体制や密着性の程度に関して,集団内で共有されている効力感を意味する"集合的有能感"が,社会的自己制御の3側面(自己主張,持続的対処・根気,感情・欲求抑制)全てを高めること,(2)共同体暴力経験(居住地域で生起する暴力事象との接触頻度)が自己制御へ及ぼす影響は,欧米とは異なり,日本独自の影響プロセスが存在する可能性があること等を報告し,子どもの社会化における地域社会環境の重要性について議論した。また,地域研性を考慮した上で,中学生を対象とした本調査を実施し,現在分析を行っている最中である。 3.青年期における対人・達成領域のポジティブ・ネガティブ経験が社会的自己制御に及ぼす影響:(1)ポジティブ達成経験は社会的自己制御の3側面全てを促進させる,(2)ネガティブな対人経験を経験しても,それを乗り越えることができれば自己主張の促進に繋がる,ことを明らかにした。当該知見は,国内学会にて発表し,現在論文を執筆中である。 なお,これまでの研究成果をまとめる形で,博士学位論文を執筆し,提出した。
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