研究概要 |
1.神経病原性トリ白血病ウイルス(ALV)のゲノム解析と病原性の比較:国内の日本鶏から分離されたfowl glioma-inducing virus(FGV)およびその近縁株のうち,4株のゲノム全長を解析した。その結果,これら4株はFGVに類似するゲノム構造を持つが,複数の遺伝子既定領域に変異を持つことが明らかになった。また,2009年度新たに九州地方で昭和初期から保存されている日本鶏群からFGVの分離を試みた。その結果,検索した115羽中33羽がFGV特異的nested-PCRに陽性を示し,病理組織学的検索により4羽がfowl gliomaに罹患していることが明らかになった。これらfowl glioma罹患鶏からはFGV特異配列をもつALVまたは国内の採卵鶏由来神経病原性ALV株TymS_90近縁株が分離された。これらの成績から,FGVは国内の日本鶏群に蔓延していることが示唆された。 2.LTRの機能解析:ALVの持つlong terminal repeat(LTR)はプロモーター・エンハンサー作用を持つ。LTRが宿主細胞の核蛋白によって調節を受け細胞性癌遺伝子等の発現異常を引き起こすことで腫瘍を誘発する。そこで,FGVおよび非神経病原性株RAV-1のLTRの機能解析を行った。初めに,FGVおよびRAV-1のLTRに結合する宿主側蛋白の存在を明らかにするためにゲルシフトアッセイ法を行った。 FGVおよびRAV-1 LTR領域を脳あるいはリンパ球系組織であるファブリキウス嚢由来核蛋白と反応させ形成された複合体を電気泳動によって分離した。その結果,ファブリキウス嚢由来核蛋白はRAV-1およびFGV LTRに結合し類似した複合体を形成した。一方,脳由来核蛋白はRAV-1と複数の複合体を形成したのに対して,FGVとは単一の複合体を形成したのみだった。
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