研究課題
オオバコモザイクウイルス(PlAMV)の感染植物内での複製精度を測定する系を確立するに先立ち、RNAウイルスの感染植物内でのゲノムの多様性を比較するため、PlAMVに近縁なRNAウイルスのゲノム塩基配列の解析を行った。まず、PlAMVと同様ひも状のウイルス粒子であり、単一の一本鎖RNAゲノムを持つフキモザイクウイルス(butterbur mosaic virus ; ButMV)の日本分離株のゲノム塩基配列を決定した。ButMVはカルラウイルス属に属すると考えられていたが、その系統学的位置は不明であった。その結果、ButMVの複製酵素と外被タンパク質の塩基配列は、既知のカルラウイルスとそれぞれ46.4-54.9%、43.2-62.1%の相同性を示したことから、本ウイルスはカルラウイルス属の独立した種であることが確認された。この知見は、近年新たなウイルスが次々と報告されているカルラウイルスの多様性の分子機構を考えるうえで非常に興味深い。さらに今年度は、PlAMVの複製精度に大きな影響を及ぼすと考えられる、PlAMVが引き起こす全身壊死(systemic necrosis)について解析を行った。その結果、PlAMVによる全身壊死には、よく知られた抵抗性反応である過敏感反応と同様の宿主因子が関与していた。また、全身壊死においては、過敏感反応と同様、細胞死だけでなくウイルスの蓄積量を抑制するような機構が働いていることが示された。このウイルスの蓄積量の抑制機構は、ウイルスの効率的な増殖を抑えることで間接的にPlAMVにおいてもその複製精度に影響を与えていると考えられ、今後の解析が必要とされる。以上の結果は全て論文として発表した。
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Virology 396
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