研究課題
本年度も、引き続き、オオバコモザイクウイルス(PlAMV)の感染植物内での複製精度を測定する系を確立するに先立ち、RNAウイルスの感染植物内でのゲノムの多様性を比較するため、PlAMVに近縁なRNAウイルスのゲノム塩基配列の解析を行った。特に、経済的に大きなダメージを与える2種のウイルスについて、日本での発生を初報告した。1つは、PlAMVと同様ひも状のウイルス粒子であり、単一の一本鎖RNAゲノムを持つplum pox virus (PPV)である。本ウイルスは、モモ、スモモ、アンズといったPrunus属の果樹に、海外において重大な被害を与えているウイルスであり、研究代表者らのグループは、日本のウメから本ウイルスを初めて検出し、これを報告した。このPPV日本分離株の塩基配列はヨーロッパに広く広がっており世界的に主要なD系統と近縁であることがわかり、その侵入経路について興味がもたれた。同時に、クリスマスに彩りを添える園芸植物であるポインセチアのウイルスであるpoinsettia mosaic virus (PnMV)の日本分離株の塩基配列を世界で初めて決定した。その結果、日本におけるPnMV分離株は、既に報告のあるドイツやノルウェーの分離株と塩基配列レベルで非常に高い相同性を示したが、アミノ酸配列レベルではその相同性は若干低かった。アミノ酸配列をアラインメントし詳細に解析した結果、PnMV日本分離株にはその複製酵素領域にフレームシフト変異が多数見出され、そのアミノ酸配列は、PnMVを含むTymovirus科ウイルスの祖先型配列と類似していた。この知見は、感染植物内での複製精度を左右する複製酵素のアミノ酸配列が、近縁なウイルス間で非常に多様化している例として非常に興味深く、PnMVとPlAMVをともに含むTymovirus目ウイルスの多様性の分子機構を考えるうえで重要であると考えられた。
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