研究課題
申請者の研究目的は、ケネス・アロー『社会的選択と個人的評価』における民主的な集団的意思決定に対する否定的な見解を批判的に分析し、その可能性を示すことである。その目的を達成すべく、まず、申請者は、英語論文"A Reply to the Criticism against Liberal Constitutionalism in the Work of Kenneth Arrow's Social Choice and Individual Values"において、アローは同書で民主的決定とともに立憲的な決定に対しても否定的な立場をとるが、自らが用いる経済学的手法の特徴から、集団的意思決定をその時々の決定として分析し、長期的な合意について論じないことを示した。次に、論文「立憲主義と世代間正義」において、世代をこえた一つの憲法に対する長期的な合意が民主社会の存続を支えることを示した。最後に、論文「パブリックと道徳感情」において、市場における自発的な倫理の形成とその問題点を示した。その結果、資本主義経済体制と立憲主義を掲げる民主社会においては、一つの憲法への長期的な合意がその維持に不可欠であるが、アローが用いる分析手法ではそのような合意を説明できず、アローとは異なるモデル形成が必要であることが明らかにされた。また、政治思想研究会でそのモデル形成の構想を含めた博士論文の構想発表を行い、博士論文の構想および論証の筋立てを整えることができた。
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The Waseda Journal of Political Science and Economics
巻: No.378-379 ページ: 139-153