本研究はSi基板上に形成されたIII-V層(InGaAs層)をチャネルとするSi基板上III-V族化合物半導体MISFETの製作とその高性能動作を目指すものであり、本年度はInP基板上InGaAsチャネル層に対し、絶縁層を形成して評価を行った。 MOS界面の改善のための手法として、絶縁膜形成前のIII-V表面に対するECRプラズマ窒化処理を行い、その効果についてキャパシタの反転動作の確認、及び界面準位密度の評価を行い、これらについてXPSによる界面観察を行い、デバイス特性との相関を取った。 InGaAs表面窒化を行い、キャパシタ作製後のアニールをすることで、界面特性を大きく改善することに成功した。窒化を行わない場合、界面準位の応答のため、低温にしなければC-V特性は十分な反転動作を示さなかったが、窒化を施すことで室温でも良好なC-V特性を示すようになった。アニールを行った窒化InGaAs MOS界面の界面準位密度を低温コンダクタンス法で評価したところ、2E+11[cm-2eV-1]というIII-V族MOS界面として非常に低い値を得ることができた。 また、XPSを用いた界面の化学結合状態の調査により、InGaAs表面への窒素の導入と、アニールによるGa-N結合の増加が界面特性の向上に寄与していることが示唆された。まず、窒化処理をしなくても、アニールを行うとAs酸化物のピークが検出範囲外まで減少するが、GaやInの酸化物は検出される。次に、窒化を行うとN1sピークが出現し、As酸化物などの減少がみられるが、検出できる程度の酸化物は残っている。ここにアニールを行うとAs酸化物が検出できなくなるだけでなく、Ga2pピークとN1sピークにシフトがみられ結合状態が変化している。以上の結合状態の変化とC-V特性の改善を照らし合わせると、As酸化物の減少に加え、Ga-N結合が増加し界面を終端したことで、特性が改善したと考えられる。 以上の研究成果の発表を、応用物理学会やSISCで行い、APLへも現在投稿中である。
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