研究課題
マガキは、他の多くの水棲生物と比べて様々な環境ストレスに強い耐性を示し、特に低酸素状態に陥る空気曝露に強い耐性を示す。これは、マガキが空気に晒される潮間帯の岩礁などに生息する固着性二枚貝類であることから、遺伝的に獲得してきた能力であろう。しかし、空気曝露ストレスに応答して発現するストレス応答遺伝子群の転写レベルでの調節機構の詳細は殆どわかっていない。プロモーター領域をクローニングしたところ、空気曝露により転写誘導される分子シャペロンCRTおよびGRP94には低酸素応答エレメントHREが認められた。このことから、これら遺伝子は空気曝露の間、低酸素応答性転写因子HIF-1によってその転写レベルが調節されていることが示唆された。また、熱ショック転写因子HSF1のプロモーター領域にもHREが認められた。real-time PCR法による発現解析の結果、マガキのHSF1は転写レベルで空気曝露誘導性を備えており、8種のHSF1変異体の応答様式は各種異なることが明らかとなった。各々のHSF1変異体は、機能モチーフの構造が異なることから、遺伝子発現制御において異なる役割を担うと考えられた。また、哺乳類でHSF1によりその転写が誘導されるHSP70は、空気曝露の間、マガキにおいてはHSF1の発現以後に転写レベルで顕著に誘導されていた。また、構成型であるHSC71は、空気曝露の間、転写レベルでの誘導は認められなかった。これらの結果から、マガキの空気曝露応答機構において、HIF-HSF経路およびHSF1の新規アイソフォームを介した全く新規の空気曝露応答機構の存在が示唆された。
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Marine Genomics (in press)
Comparative Biochemistry and Physiology, Part B 154
ページ: 290-297