CaMKカスケードの生理的役割を解明するため、CaMKKの生理的基質の探索を行なっている。これまで我々が行なってきた方法は的グルタチオンセファロースにGST-CaMKKを結合させ、そこにラットの臓器抽出液を供するという、酵素と基質の結合を利用した方法であった。この方法は一回の操作で基質を精製できる可能性があるという利点をもつ一方で、多くの基質以外のタンパク質分子が非特異的に結合するという欠点をもっていた。 我々は、試験管内において、CaMKKがATPだけでなくGTPもリン酸供与体として利用可能である事を発見した。さらに、CaMKKの特異的阻害剤であるSTO-609は、GTPを利用したCaMKKによる基質のリン酸化を阻害した。ほとんどのリン酸化酵素が、GTPをリン酸供与体として用いることができないことから、GTPとSTO-609を用いたCaMKK標的分子の探索が有効である可能性が示唆された。そこで、実際にラット脳抽出液を30℃で10分間リン酸化をさせた後、anti-phosphoThreonineを用いてウエスタンブロッティングした(下図)。実際に、Ca^<2+>/CaM存在下でリン酸化が上昇し、STO-609処理でリン酸化が減少するバンドとして3つのバンドが検出された。一番上の矢印で示されるバンドは、STO-609処理によるリン酸化の減少がやや弱いが、Ca^<2+>/CaM存在下でリン酸化が上昇した。上から2番目のバンドは、Ca^<2+>/CaM非存在下でもリン酸化されているが、Ca^<2+>/CaM存在下でさらにリン酸化され、STO-609処理によりリン酸化が減少している。上から3番目のバンドはCa^<2+>/CaM存在下でリン酸化が上昇し、STO-609処理でリン酸化が減少している。この3つのバンドのうち真ん中の1つは、ATP用いた場合においては(下図の左側)、バックグラウンドの上昇により判別しづらく、この方法の有効性が示唆された。 現在、これら3つのバンドを同定するため、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーにて精製中である。精製後は、質量分析後にてバンドを同定する予定である。
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